初恋のキミは最愛ヒーロー
懐かしい…。
昔、着ていた浴衣も朝顔柄だったな…。
確か、白地に赤紫の朝顔の浴衣でピンクの帯だっけ。
お母さんが花火大会の日に着付けをしてくれて、それを見たお父さんが満面の笑顔で“可愛い”って褒めてくれて。
あの時、とても嬉しくて笑顔でお父さんに抱きついたんだよね。
私にとって、温かい大切な思い出。
お父さん、空の上から見てくれてるといいな、この浴衣姿。
山丘さんが用意してくれた青紫色の鼻緒の草履を履いて教室に戻ると、クラスの子たちの視線が一斉にこちらに向けられた。
「碧瀬さん、可愛い~!」
「浴衣姿、すごく似合ってる!」
先に着替えていた宣伝担当の女の子や紫葵ちゃんが傍にやって来て声を弾ませる。
キラキラと目を輝かせながら見つめられて、頬が熱くなった。
恥ずかしい…。
こんなに視線を浴びると思わなかった。
あまり見ないで欲しい…。
目を伏せていた時だった。
「莉彩、おはよ」
その声に反応して肩が跳ねる。
振り向くと、驚いた表情の壱夜くんが立っていて、ドクンと心臓が高鳴った。