初恋のキミは最愛ヒーロー
それにしても、あの時の細身でマスク姿の男の子が壱夜くんだったなんて…。
言われてみれば、目元に少し面影があるような気が…。
「莉彩の笑顔を見た時、初恋の女の子に雰囲気が似てると思ったんだ。でも、莉彩のお父さんに“サチ”って呼ばれてたから、名前も違うし他人の空似かなって」
「そうだ!私、当時は……」
「渾名の話は莉彩のお母さんから聞いた。莉彩を家まで送った日に」
お母さん、壱夜くんとそんな話までしてたのか…。
「花火大会の時に莉彩に助けてもらったこと、莉彩のお母さんには黙っててもらったんだ。俺の口から話したかったから」
綺麗な夕日が屋上を照らす。
「あの時…伝えられなくて、もしも会えたら絶対に言いたいと思ってた」
涼しさを纏った風が私たちの髪を揺らした。
「花火大会の日、俺を助けてくれてありがとう。あの日から、ずっと莉彩が好きだった」
「壱夜くん…」
「莉彩を振って傷つけた俺が言う資格がないのは分かってる。でも、言わせて欲しい」
真剣な表情の壱夜くんに、私の目頭は熱くなっていた。
「莉彩、俺と付き合ってください」
言葉を聞いた瞬間に、零れ落ちた涙。
嬉しくて胸がいっぱいになった。