初恋のキミは最愛ヒーロー
「莉彩ちゃん、これからも壱夜のことを宜しくね。無愛想なヤツだけど、めげずに声掛けてやって?」
「うん…!」
もちろん、そうする。
だって、壱夜くんとの距離を縮めたいから。
「だんだん冷え込んできたし、帰ろっか」
「あ、あの…神楽くん!壱夜くんのことで、一つ聞きたいことがあるんだけど…」
「ん、何?」
フェンスに凭れていた背中を離した神楽くんは、不思議そうに瞬きをしながら首を傾げた。
「壱夜くん、前に不良たちとトラブルになったこととか、あったりする?」
「えっ…?」
「実は、私…引っ越してきた日の夜に不良たちに絡まれちゃって、そこを壱夜くんに助けてもらったんだけど…」
その時の不良たちが怯えていたこと、交わしていた会話を伝えると、途端に神楽くんの表情が曇る。
心当たりがあるんだと、直ぐに察した。
「あれは……」
右手で左腕をゆっくりと擦りながら、神楽くんが口を開いた時…。
「そんなの、碧瀬には関係ねぇだろ」
聞き覚えのある低い声が響きわたった。