初恋のキミは最愛ヒーロー
「とにかく、俺は碧瀬が思い描いてるような人間じゃねぇから。今後、一切…俺に関わるな」
言葉が刃物のように、胸に突き刺さる。
「壱夜、お前……」
「行くぞ、桃舞」
壱夜くんは神楽くんの手首を引っ張って歩いて行き、屋上のドアを荒々しく開ける。
振り返った神楽くんは、申し訳なさそうに“ごめん”と口パクで謝って、出て行ってしまった。
ジワリと滲む視界。
零れ落ちそうになるものを、指で拭った。
壱夜くんと不良たちの関わり。
詳しいことは分からないけど、神楽くんの反応からして、やっぱり何か理由があったんだと思う。
暴力だって、きっと…事情が。
それなのに、どうして…
自分を悪者扱いして、壁を作ろうとしてるの?
距離を置こうとするの?
“俺に関わるな”っていう言葉、本心から言ってるとは思えなかった。
だって…その時の壱夜くん、無表情だったけど、少し…瞳に悲しさを滲ませていた気がしたから。