初恋のキミは最愛ヒーロー
その後、壱夜くんと一緒に勉強を始めた私。
「……んで、正弦定理も余弦定理も公式があるんだけど、これをシッカリ覚えるのが大切。まずは、正弦定理の公式から説明するから。この教科書の図を見ると分かりやすいと思うけど…」
図の書かれている部分を指差しながら、壱夜くんが淡々と説明を進めていく。
ほぼ無表情だし、事務的な声。
だけど、とても丁寧で理解しやすい。
「壱夜くんって、教えるの凄く上手いね!とても分かりやすい」
「別に普通だろ」
「そう言えば、どうして古書室に来たの?雨宿りなら、教室でも出来るのに…」
「教室は女子たちが喋っていて鬱陶しかったんだよ。ここなら、生徒の出入りも滅多に無いから静かに過ごせるし」
「ここ、よく来るの?」
興味津々で訊ねる私を壱夜くんは鋭く睨んだ。
「んなこと、どうでもいいだろ。無駄口叩いてる暇あったら、この問題…さっさと解け」
「う、うん…」
お叱りを受けてしまった…。
勉強から脱線した私が悪いから仕方ないけれど…。