初恋のキミは最愛ヒーロー
「えっと、どうやって解けば……」
「こういう時は頭の中で考えるよりもノートに三角形を書いた方が、イメージもしやすい。実際に書いてみな」
「うん」
紙の上でシャーペンを走らせながら、図を書いていく。
「あ、本当だ…。分かりやすくなった」
「だろ?そうしたら、次は公式を当てはめて…」
私語に対しては怒られたけど、勉強は…きちんと私のペースに合わせて教えてくれる。
順を追って、ゆっくりと。
「これでいい?」
「正解。ちゃんと公式は理解してるみたいだな。それじゃあ、何問か練習問題やってみろよ」
次のページを捲ってくれる壱夜くんに、顔が綻ぶ。
いくら雨宿りの時間潰しと言っても、友達でもない私に対して、ここまで丁寧に勉強を教えてくれる人、なかなか居ないよ…。
“俺は碧瀬が思い描いてるような人間じゃねぇから”
そんなことない。
もしも冷たい人なら、とっくに私を無視して古書室から出て行ってるはずだもん。
壱夜くんは…
とても優しい心を持ってる男の子だよ。