初恋のキミは最愛ヒーロー
傘の下、二人きり
壱夜くんと勉強を始めてから、かれこれ1時間ぐらい経過した。
「キリの良いところまできたし、そろそろ終わりにすれば?」
その声に反応してノートから視線を上げると、窓の外は雨のせいもあってか、スッカリ暗くなっていた。
「そうだね、帰ろっか」
一気に頭に詰め込んだから、パンクしそう。
でも、来週火曜日のテストまでは辛抱して頑張らなきゃ。
片付けと身支度を済ませて立ち上がる。
隣の壱夜くんに視線を向けると、帰り支度をする気配もなく、座ったままだ。
「あの、帰らないの…?」
「まだ雨が降ってるから帰れない。引き続き、俺はここで時間を潰すから、先に帰れ」
そっか。
壱夜くん、傘が無いんだっけ…。
「それなら、私の傘を使って?置き傘と折りたたみ傘の2本あるから」
「別にいい。そのうち止むだろうから」
「だけど、勉強を始めた時よりも雨足が少し強くなってるよ?この調子だと、いつまで経っても帰れないかも…」
通り雨ではなさそうだし…。