初恋のキミは最愛ヒーロー
「真夜中まで…。いや、もしかしたら明日の朝まで降り続く可能性だってあるよ?」
「……………」
壱夜くんは席を立って、窓際に移動する。
雨が降る様子を眺めながら、ダルそうに溜め息を零した。
「んじゃ、傘…借りていい?」
棒読みな言い方…。
それでも、壱夜くんからのお願いは素直に嬉しくて、笑みが溢れる。
「もちろんっ!」
「声がデカい。うるさい」
不機嫌そうに目を細めて私を一瞥した壱夜くんは、机に置いてあったバッグを肩に掛けて、足早に古書室を出て行く。
私も慌てて、彼を追いかけた。
特に会話をすることなく、昇降口に到着。
靴を履き替えて、傘立てのところに来た私は、目を大きく見開いた。
「あれ…?」
私の置き傘が、ない…。
今朝はあったのに…。
不思議に思いながらキョロキョロと辺りを見回すと、無表情の壱夜くんと目が合った。