初恋のキミは最愛ヒーロー
「傘、ねぇの?」
「うん…。ここにあったはずなんだけど…」
「誰かが勝手に持ち出したのかもしれないな。今日は午後から雨だったから、俺みたいに傘を忘れてきたヤツもいただろうし。もし…傘を間違えて持っていったとしたら、ここに傘が余ってるはずだろ?でも、一本も残ってない」
確かに、そうだよね…。
あの傘、わりと気に入ってたんだけどな…。
「……ったく、他人の傘を無断で持って行くなんて有り得ねぇ」
「う、うん……」
それはそうと、傘…どうしよう。
一本の折りたたみ傘の中に二人で入って帰るなんてこと、壱夜くんがするだろうか…。
バッグから折りたたみ傘を取り出す。
“無理”って、言われそうだけど、聞くだけ聞いてみよう。
「あの……」
「じゃあ、その傘に二人で入るしかねぇな」
「うん、そうだね………って、えっ!?」
折りたたみ傘を指差す壱夜くんに、パチパチと瞬きを繰り返した。