初恋のキミは最愛ヒーロー
「何だよ、その新種の生物でも発見したかのような驚き方は」
「だって、壱夜くん…そういうの嫌がりそうだから」
「そりゃ、嫌に決まってんだろ。だけど、不測の事態なんだから仕方ねぇじゃん。アンタに促されたせいで、俺は帰宅モードになっちまったし」
やっぱり、嫌なんだ…。
渋々…っていう雰囲気が、声にも表情にも滲み出てる。
苦笑いしていると、壱夜くんは私の手から折りたたみ傘を取った。
「さっさと帰るぞ」
昇降口を出て、傘をさす壱夜くん。
私は、小走りで中に入った。
「せ、狭くてごめんね…」
「折りたたみ傘なんだから、こんなもんだろ。別に謝ることじゃない」
「うん…」
雨足が強い中、帰り道を歩く。
時折、壱夜くんと私のコートが触れ合う度、ドクン…と鼓動が高く跳ね上がった。
傘の下に二人きり。
この近距離、思ってた以上にドキドキする…。
もしも雨が降ってなかったから、この心臓の音は壱夜くんに聞こえていたかもしれない。