初恋のキミは最愛ヒーロー
「ふ、冬の雨って…とても冷たいね」
「気温が低いんだから、当然だろ」
「でっ、ですよね……」
黙ってると落ち着かないから、何か会話をして気を紛らわせようと思ったけど…
一瞬にして終了してしまった…。
なんで当たり前すぎることを発言したんだ、私は。
ただならぬ緊張の影響で、空回りしてるのかな…。
「碧瀬…」
「は、はいっ!!」
「なんだよ、その雨にも負けないようなデケー声。もっと普通に返事できねぇのかよ」
そんなウザそうに言われても……。
ドキドキしてる中で、いきなり壱夜くんに呼ばれたから、驚きのあまり声が大きくなっちゃったんだよ…。
「まあ、いいや。それより昨日、アンタ…俺に関する噂の内容が腑に落ちない的なこと、桃舞に言ったんだって?」
「うん…」
「なんで、そんな風に言えんの?」
壱夜くんは、真っ直ぐ前を向いたまま低い声を放つ。
白い息が雨に溶けた。
「俺のこと、殆ど知らねぇくせに」