初恋のキミは最愛ヒーロー

雨音にかき消されそうなほどの小さな声。


その呟かれた言葉を、私は聞き逃さなかった。


「壱夜くんっ、今の……」


「あー、悪い。“ありがた迷惑”の間違いだった」


「えっ、そうなの…?」


ということは、その前に“嬉しかった”って言ってたのも言い間違い…?


浮上した気持ちが、一気に沈む。


頭の中でモヤモヤと考えていると、突然…壱夜くんは私の顔を覗き込んできた。


「バーカ、嘘だよ」


ベッと舌を出す壱夜くん。


ほんの一瞬、いたずらっぽく浮かべた笑みに、ドクンと鼓動が激しく波打った。


心臓の音、これまでにないぐらい大きい。


壱夜くんの新しい表情、破壊力が半端ないよ。


上昇していく心拍数と共に、私の気持ちもフワフワと浮上していく。


ついさっき、沈んだばかりなのに。


壱夜くんの言葉や表情ひとつで、いとも簡単に変わってしまう。


好きな人がもたらす影響力って、絶大だな…。


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