初恋のキミは最愛ヒーロー
例え、一歩だけだとしても
「寒い…」
昨日の雨とは打って変わって、青空が広がる朝。
冷え込みが厳しくて肩をすくめながら登校してきた私。
昇降口まで来たところで、なんとなく後ろを振り返った。
壱夜くん、あの後…ズブ濡れだったよね。
冷たい雨だったし、風邪ひいてないといいけど…。
後で様子を見に6組の教室に行ってみよう。
心の中で頷きながら下駄箱のところで靴を履き替えようとしていると…
「あ!碧瀬さんじゃん、おはよー」
顔を上げた私の目に映ったのは、この前…壱夜くんに関わらない方がいいと忠告してきた、茶髪のボブヘアーの女の子だった。
「お、おはよう…」
ぎこちなく挨拶を交わすと、彼女は少しニコリと笑ったものの…
すぐに不機嫌そうに顔を歪めた。
「碧瀬さん、私の言ったこと…無視したでしょ?」
「えっ…」
「私、昨日…碧瀬さんが黒河内くんと一緒に帰ってるところを偶然見かけたんだよね。本当、ビックリしちゃった」
穏やかな口調なのに、背筋に寒気が走る。
嫌な汗がジワリと手に滲んだ。