初恋のキミは最愛ヒーロー
「く、黒河内くん……」
さっきまでの威圧感ある冷たい表情は、一転して怯えたものになる。
女の子が後退りすると、上からダルそうな溜め息が降ってきた。
「あのさ、俺は…どんな風に言われても構わねぇけど、碧瀬を悪く言うのは止めてくんない?コイツ、不良とは無縁だから」
ビクリと女の子の肩が震える。
「もし、碧瀬のことで有りもしない話を捏造して周りに広めようとしたら、女だろうと容赦なくボコボコに殴ってやるから覚悟しとけよ」
なっ、なんて物騒なことを…!
殺気を含んだ低い声に、完全に涙目の女の子。
「は、はいっ…。す、すみませんでした!!」
直角になるぐらい深々と頭を下げた後、転びそうな勢いで走って行ってしまった。
「……ったく、朝っぱらから変な女に絡まれてんじゃねぇよ」
私の口元を覆っていた手が離れる。
振り返ると、不機嫌そうな顔をしている壱夜くんの姿が目に映った。