初恋のキミは最愛ヒーロー
「ど、どうして…殴るなんて言っちゃったの!?あれじゃあ、噂が真実味を帯びて、みんなから余計に距離を置かれちゃうじゃない」
「別に、どうでもいい」
「よくないよ…。壱夜くんが優しい人だってこと、どんどん周りにアピールしていかなくちゃ…!」
「そんなの、必要ない」
「でも……」
すかさず反論しようとすると、壱夜くんは私の額を軽くデコピンする。
きっと、“ウザい”とか“鬱陶しい”って言われるに違いない。
額を擦りながら身構えた。
「俺は、碧瀬が知っていてくれれば…それでいい」
「えっ…」
真っ直ぐ体を突き抜けるような眼差し。
水を得た魚のように、ドクン…と心臓が跳ねた。
「鬱陶しいぐらい親密に接してくるのは、桃舞と碧瀬だけで十分だからな。俺、あまり人が近寄ってこない、今の静かな環境が気に入ってるし」
そ、そういう意味だったのか…。
私にだけ心許してくれてるのかも…なんて、自意識過剰な解釈をしてしまった。
恥ずかしい…。