初恋のキミは最愛ヒーロー
「んじゃ、俺は先に行くから」
欠伸をしながら、自分の下駄箱へ向かおうとする壱夜くんのコートの袖口を、咄嗟につまんだ。
「朝から嫌な場面に巻き込んじゃって、ごめんね…」
「もとは俺が原因なんだから、碧瀬が気にすることじゃねぇだろ。それより、アンタが怒ってるところ…初めて見たわ」
「だって、壱夜くんを完全に危険人物扱いしてるから、腹が立ったんだもん…」
「俺よりも散々なこと言われてたはアンタなのに。怒りの優先順位が違うだろ」
そうなのかな…?
自分よりも好きな人のこと悪く言われる方が、頭にくるんだけど…。
「でも、そんな碧瀬が…不覚にもカッコいいと思った。さっきは、ありがと」
照れくさそうに視線を逸らす壱夜くんに、胸がキュウッと音を鳴らした。
ヤバい、嬉しくてニヤケる。
今の言葉で、一日が元気に乗り切れちゃいそう。