初恋のキミは最愛ヒーロー
「そろそろコートを掴んでる手、離してくんない?教室に行きたいんだけど」
「ごめん…。あっ!それはそうと、壱夜くん…体調は大丈夫?」
「何だよ、急に」
コートから手を離すと、壱夜くんは眉をしかめる。
「昨日、公園のところから傘無しで帰って行ったから、風邪ひいてないかと思って…」
「具合悪いように見える?」
「見えないけど、元気があるように振る舞ってるってことも…」
「そんな面倒な演技しねぇよ」
そっか…。
元気なら、良かった…。
胸を撫で下ろすと、壱夜くんは苦笑した。
「今は…体が丈夫になったから、滅多に体調を崩すこともなくなった。じゃあな」
「う、うん…」
“今は”ってことは、以前は違ってた…?
まあ、私も小さい頃の方が風邪をひくことが多かったもんなぁ…。
足早に去って行く壱夜くんの背中を見つめていると、後ろからポンポンと肩を軽く叩かれた。