初恋のキミは最愛ヒーロー
でも、壱夜くんのデタラメな噂は、相変わらず蔓延したまま。
本人は今の状態でいいと言っていたけど、私は…みんなに本当の優しい壱夜くんを知って欲しい。
直ぐには無理かもしれないけど、少しずつ変えていきたいなぁ…。
「ところで、碧瀬さん!前の学校ではバレンタインに男の子にチョコレートを渡してた?」
「ううん、全然…」
「それじゃあ、今度のバレンタインは誰かにチョコを渡す予定とかある?」
「今のところは特に。でも、どうして?」
「ほら、あとちょっとで2月14日じゃん?だから、碧瀬さんのバレンタイン事情が気になっちゃって」
そう言えば、バレンタインまで…あと一週間ぐらいか。
ついこの前…転校してきたと思ったら、もうそんな時期になってたんだ…。
「み、みんなは…渡す相手が決まってるの?」
私の席を囲む女の子たちは、ニンマリと笑みを浮かべながら頷く。
「もちろん、7組の王子!」
見事なぐらいに女の子たちの声が重なった。