初恋のキミは最愛ヒーロー
「それはそうと、痛むところとかない?俺、勢いよくぶつかっちゃったから…」
「うん、大丈夫」
「落としたノート、直ぐに拾うよ」
しゃがんだ紅月くんは、散らばったノートを手早く拾い始める。
私も慌てて拾おうとしたけれど、“俺がやるから”と優しく制されてしまった。
「よし、これで全部だな。えっと、これ…どこに持ってくの?」
「国語準備室だけど、あの…あとは私がやるので紅月くんは……」
「ぶつかった俺が悪いんだし、せめてノート持ってく手伝いだけでもさせて?」
北棟へと歩き出す紅月くんの後に続く。
すれ違う女の子たちから、熱い視線や黄色い声を浴びる姿は、まさに王子そのもの。
すごい人気ぶりだなぁ…なんて他人事のように感じながら廊下を進むうちに、あっという間に国語準備室へと辿り着いた。
戸村先生にノートを渡して、部屋を出た私たち。
「紅月くん、ありがとう」
お礼を言うと、穏やかな笑みが返ってきた。