少女、紅茶香る
私が絶望している間にも、喜沙はどんどん私の体を貪り続けていく。胸の次は首筋に、耳に、唇に。上が終わると今度は足先に、太ももに、陰部の付近へとどんどん舌を這わせていった。
「橘君の精子、あるんでしょ。ここに、この中に」
あはは。と喜沙は笑った。
そして私の陰部へと舌をねじ込む。しかし、実際のところ彼はその時律義に避妊具を使用してくれたので、中に橘の体液は存在しない。
目線を下に落とすと、目の前に橘の名前を連呼しながら私の陰部をまさぐる雌が目に入った。背筋に悪寒が走る。気持ちが悪くなって、私は思わず足でその雌の頭を蹴り飛ばした。
「きゃあっ」
高い鳴き声をあげて、雌が地面に倒れた。
私は立ち上がり、鞄からタオルを取って体に纏わりついた唾液をふき取り、剥ぎ取られた衣服をもう一度丁寧に身につけ始めた。ところどころ唾液の悪臭がする自身の体に眉をひそめながら、私はこの温室を立ち去るため鞄を手に取った。すると。
「まだ足りないの、待ちなさい!」
後ろから雌が私の体を摑みにかかってきた。衝撃で、一瞬ぐらりとバランスを崩してしまったが、すぐに立て直す。私はもう一度その雌を蹴り飛ばすと、テーブルの上に置いてあったアールグレイの液体を地面に倒れこむ雌に向かって躊躇なくぶちまけた。更に、鞄の中からいつも持ち歩いていたアールグレイの茶葉が入った袋を取り出して、ビショビショになった雌の上からまき散らした。濡れた髪や衣服に茶葉が何枚もひっついて、見た目はまるで枯葉に埋もれた醜い豚のようだ。
なにするの!と雌は激怒したが、私はそれを軽くあしらう。それが気に入らなかったのか、ぎゃんぎゃんと必死に鳴き喚き続ける雌を後ろに、私は温室の扉の前まで歩みを進めると、振り返って雌に言った。
「うるせぇ、豚が」
温室を出ると、あああああああ。と叫ぶ声が聞こえた。