少女、紅茶香る



 そのあと、何度車の中で達したのだろう。私は「あ」の字も発せなくなるほどにくたびれていた。窓の外を見ると、明るい太陽が東の空から顔を出している。いつの間にか、男の姿はもうそこにはなかった。車のシートに無残に散らばる二人の体液と、ぐしゃぐしゃに丸められた私の衣服が虚しく取り残されていた。私の体内からまだ溢れている男の液に、もう悲しさなんて感じなかった。しかし、その日が安全日だったことがせめてもの救いであったというべきか。そして、そこでやっと私は涙を流すことができた。処女を失ってまで男の性欲処理にされた悲しさからか、または殺されずに済んだという安堵からかは分からないが、私はしばらく自身の瞳を塩素の海に沈め、頬を濡らした。
 

 しばらくすると警察がやって来て、私は保護された。親と喜沙に会った。どちらとも大粒の涙を流して、私を抱きしめた。


────みっちゃん、みっちゃん、無事でよかった。


 喜沙が震えた手で私を抱きしめる。


────もう絶対、みっちゃんを一人にしたりしないから…!ごめんね、ごめんね。


────うん、絶対だよ。


 そして、犯人は意外とすぐに捕まった。色々と警察との話し合いや裁判を経て、この事件は幕を閉じる。
あのあと、喜沙が本当にホテルに連れ込まれたのかどうかは分からない。だが、もしそんなことが起きていたとしたら、喜沙の家の力により彼はもうここにはいないだろう。しかし彼は今も元気にこの街で暮らしている。ということは、喜沙は何らかの形で行為を阻止できたということだ。


 喜沙は、私と違って綺麗な身体を残している。だが、別にそれを羨ましいとも思わない。寧ろありがたいと言うべきだ。私はそのままの綺麗な喜沙を愛しているのだから。




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