少女、紅茶香る





 結局、喜沙は日曜日に橘とは会わなかった。いや、会わせなかったと言う方が正しいのかもしれない。その日は私が無理矢理に喜沙をとどまらせたからだ。喜沙は確実に、あの日のことを後悔している。私が誘拐されたのは、一緒にいてやれなかった自分のせいだと。だから私のする行動に、何も言えないし抵抗できないのだと思う。


 普通の人間ならここで、あなたのせいじゃないよ、と言ってやるのが当たり前なのだろう。だが、そんなことは絶対に言ってやらない。喜沙は一生私に負い目を感じて生きていればいい。そして、ずっと私の傍にいればいい。
卑怯なことは分かっている。だけど私にはこれしかない。これでしか、私の大好きな喜沙を手元に置いておけない。


 だったら、仕方のないことでしょう?



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