【【贅沢な片思い】】ヤツの所には行かせない!
思っていることを口に出して言ったら、モテ男を勘違いさせてしまう。それに気がつかないわけじゃない。


沈黙の後で梨田が言った。

「芽衣……違ってたら、ごめん」

「…?」

「なんかさ、俺に期待してきた?」

期待なんかしてない。モテ男に期待したら馬鹿をみるのは私の方だ。

首を横に振る芽衣。

「期待?しないわよ。あなたみたいなモテ男なんかに。モテ男なんてみんな自分勝手だし、イケメンだからってなんでも許されると思ってるし。最初から…全然信じてないから」
早口でまくし立てる。
言えばいうほど、わけのわからない方へ墓穴を掘りそうだ。



梨田に背を向けドアノブに手をかける。

モテ男なんか、大嫌い。
どんな女にも優しいんだから。女を勘違いさせて、自分の方を向かせたいだけだ。

自分の方へ向かせたら、もう向かってきた女には飽きてしまう。

モテ男たちは、みんな同じだ。
同じだから、嫌なのに。


傲慢で自分になびかない女なんか、この世に存在しないと信じている。

モテ男たちは、一度にたくさんの女を相手にしている。ひとりになんか絞らない。絞る必要がないからだ。

その他大勢の中の一人になんかなりたくない。

もう、遊びの恋愛なんかしている歳じゃない。どこかにいるはずの、私だけを思ってくれる人と真剣な恋愛すべきだ。それが幸せになれる唯一の道だ。

この人も違う。

これだけの軽いイケメンだ。この人も女を一人になんか絞らないだろう。何人もの女と恋愛をして遊んでるに決まってる。

モテ男なんか信用しない。
この人もきっと同じだ。

二度と同じ過ちは繰り返さない。



それなのに……

湧いて来た
この気持ちはなんだろう。





ドアノブに手をかけた芽衣は、後ろから梨田に抱きしめられていた。


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