【【贅沢な片思い】】ヤツの所には行かせない!

指定された恵比寿にあるイタリアンレストラン。アイアン製のオシャレな看板前で芽衣は足を止めた。


先月結婚して長野へ引っ越して行った真知子。『前みたいにそばにいれなくなって、今後の芽衣が心配だから』

そんな過保護な理由から、今回、旦那さんの幼馴染で独身だという男を紹介してくれることになったのだ。

真知子も嫁ぎ先で働いているし、いちいち長野からでて来られないと言う理由から、芽衣は今夜、顔も知らない男と仲介者なしで待ち合わせすることになっていた。

『梨田(なしだ)って名前で予約してあるから、先に座っててだって』
真知子からのラインでそう教えられた。


『いい人だから』

それだけの情報しか与えられていない。
写真くらい送るなりして見せてくれてもいいのに、結局今日まで見せてくれなかった。

それどころか『恋人を顔や職業で決めるつもり?』と真知子と旦那さんの2人からは白い目で見られ職業を聞くことも許されなかった。

だから今夜初めて会う相手が梨田 大和(なしだ やまと)。33歳。独身。ということ以外、職業も顔もわからない。


まあ、こちらとしては恋人を顔や職業で決めるつもりはない。無いのだが、それなりに多少のこだわりくらいは、あったりするものだ。

背は自分より低くでもいいし、顔は愛嬌があるくらいのレベルで結構だ。多少ビンボーでも、食べていけるなら大丈夫だと思える。性格は優しいに越したことはない。

ただ、多くを望まない芽衣にも譲れない点がひとつだけあった。


自信過剰なモテ男。いわゆる俗に言うイケメン。イケメンだけは勘弁してもらいたい。

芽衣が紹介相手に望むこと。

それは『イケメンじゃないこと』ただそれだけだった。
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