【【贅沢な片思い】】ヤツの所には行かせない!

考えてみたら、伊野夫婦に恋人候補を紹介してもらうなんてあまりにお手軽な方法過ぎた。そこから猛反省すべきだ。
お手軽に運命のような恋に発展したり、急に無二の親友が出来るなら、世の中みんな苦労しないはずだ。

お見合いだって、きっと1回目では成就しないに違いない。何回もチャレンジして、ようやく良き出会いに恵まれるのだ。

1回目のお見合いでうまく行く人がいたとすれば、それは奇跡だ。1回目の紹介から、そうそううまく行くわけがない。

だからといって、2回も3回も紹介してもらいたいとは思ってもいないが。

「あ、それ」

「は？なに？」

「それだよ。俺も、あんたの言わんとすることわかる。だから、紹介って嫌だったんだよ」

「え？」

「だってさ、どんな女がくるか、わかんないしさ。紹介されてすぐに付き合いましょうかってなるのは、どうも無理矢理くさいだろ？それに俺は女を紹介してもらわなくて出会いは山ほどあるんだ」

自慢してるの？
自分はモテるから 紹介なんか必要なかったって言いたいのだろうか。

今更、こいつは、なんてこと言い出すの？

「……」
こんな軽い男に私の気持ちがわかる訳がない。

この男は、気乗りしない紹介に、のこのこ現れた女が、扉を開けた瞬間に気に入らなかったのだ。
だから、紹介なんかに期待してくるような女をからかって笑いたくなった。それだけだ。

「だから俺は」
梨田の話の途中で芽衣は、店の出入り口へ向かい始めていた。
「ちょっと、まだ話の途中なんだけど」
梨田に腕を掴まれて芽衣はうんざりしたように振り向いた。

「帰ります。あなたは私のタイプじゃないので。あなたもそうでしょ？」

「いやいや、待てよ。そんなこと1度も言ってないだろ」