【【贅沢な片思い】】ヤツの所には行かせない!
「でも、うちの忠くんの幼馴染だから。いい人だと思うよ」
「知らない。とにかくあの人とはもう会わないから」
「う〜ん。わかった。無理にとは言わないよ。嫌なら仕方ないわよね」
真知子の沈んだ声を聞いたら、罪悪感がうまれてきた。
真知子は、わたしを心配しているのだ。だから、せっかく恋人候補を紹介してくれたのだ。
「ごめんね。旦那さんの友達なのに、文句なんか言って」
「いーって、芽衣。気にしないで。気に入らないんなら仕方ないよ」
真知子との電話を切ると、芽衣は椅子の上で体育座りをした。膝に頭をつけて長く息を吐いた。
真知子には、悪いことしたなぁ。
イケメンじゃなければ、どうにかなったかもしれないけど。
思い出す梨田の顔は、どこから見ても精悍で彫りの深いハーフ顔のイケメンだった。
まつ毛もフサフサで、長くて…。
テーブルに置いていたスマホが突然鳴り出して、びっくりして芽衣はスマホへ手を伸ばす。
画面を見ると知らない番号だった。
少し迷ったが、なんとなく気になり出てみることにした。
「もしもし? 」
「俺、梨田」
「ちょっと、なんで番号わかるの?」
「前に真知子さんに聞いたんだ。待ち合わせして会えないと困るからさ」
真知子のことは、さすがに呼び捨てじゃないんだ。
少し鼻で笑ってから芽衣は
「削除してください。それじゃ」
電話を切ろうとした。
「待った! 話あるんだ」
慌てたような梨田の大声に芽衣は耳からスマホを遠ざけていた。