【【贅沢な片思い】】ヤツの所には行かせない!
モテ男といるのは、何故か酷く疲れてしまう。
「はあ」
暗くなりCMが流れ、スクリーンが広がり映画が始まった。
隣が気になり、居心地が悪い。体もやたらと動かせずコーラを飲み込むのにも緊張していた。
映画も中盤になり、ようやく集中して出来ていた頃、今度は少し足元が寒くなってきた。
やはりスカートなんかやめて、パンツにすれば良かった。
芽衣はスカートで映画に来たことを今更悔やんでいた。足を後ろへ引いて、手を腿の辺りに乗せる。
手の温かさが少し足に伝わる。
少ししてパサっと芽衣の膝にジャケットが被せられた。
梨田の方を見ると、
「寒くなってきたんじゃない?」と囁かれた。
スクリーンから伸びて来た光に照らされて見える梨田の横顔。
暗いが梨田が微笑みを浮かべていることは、十分に見てわかる。
優しく紳士な態度で気が効く男だろって、自分自身に酔ってそうな表情にも見える。
「どうも」
それなら、気が効く男ぶっていればいい。
モテ男の考えることなんかお見通しだ。優しくすれば女は落ちると思ってるのだ。
梨田は、スクリーンを見たまま芽衣の方へ顔を寄せた。
「いーえ。役に立つなら何でもするよ」
何でもするなんて、いい加減なことをあまりに軽く言い過ぎだ。
到底信じられる言葉じゃない。
モテ男の言うことなんか信用出来ない。
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食べ終えたポップコーンの容器を片手で静かに潰した梨田は、膝に乗せていた芽衣の右手をそっと握った。
「手も冷たいな」
梨田に、そう囁かれ握られた芽衣の手は、映画が終わるころには、すっかり温かくなっていた。