【【贅沢な片思い】】ヤツの所には行かせない!
腕を絡めたまま、芽衣は梨田を冷たく見上げた。
「イタリア料理は大嫌いなの。だからレストランには行かないわ」
梨田がイタリアンレストランのオーナーだと知ってて言っているのだ。
イケメンなモテ男に懲らしめられるのは、もう2度とごめんだ。
モテ男なんか…大嫌い。
「私って面倒な女でしょ? わかったら、もう2度と連絡してこないでね」
睨むように梨田を見て、芽衣は梨田の腕から手をさっと離した。
「芽衣」
呼ばれても振り返らない。
振り返る意味は無いから。
先の見えない恋愛はしない。
ずいぶん前にそう決めたのだ。
遊びの恋愛をする気もないし、そんな暇は無いのだ。
遊びなんかに付き合ってモテ男と短い恋愛なんかしていられない。
もう、私は30歳なのだから。
誰かが走ってきた靴音が響いてくる。
「芽衣ってば」
振り返らないと決めた芽衣の前に立ちはだかる人影。
「どこ行くんだよ、芽衣」
風になびく梨田の前髪。困ったように下がった眉毛が前髪の間から見えていた。
「あなたのレストランにも家にも行かない。そう言ったわ。イタリア料理も大嫌いだし」
可愛い女になんかなれないし、なるつもりもない。
モテ男にどう思われようと構わない。
彼らモテ男たちは、私なんかじゃ決して満足しない。それがわかるから2度とモテ男には深入りしたくない。
モテ男たちは皆、1人の女で満足出来ないのだから。そんな人に関わるだけ時間の無駄だ。