【【贅沢な片思い】】ヤツの所には行かせない!
タオルケットを梨田にかけ直してやり、芽衣は窓辺に立った。
カーテンを開き、音のしない都会の夜を眺める。
「……何してんだろ」
意味のない1日だった。
モテ男振り回されて、頭にきて反対に振り回したつもりが、最後にはホテルの部屋に入ってしまうなんて。
最低な気分だ。
自分がバカみたいに思える。
2年前のあの夜よりは、ましだ。
あの夜は、もっと悲惨だった。
イケメンなモテ男なんか信じたら駄目だったのに。バカな私は、また引っかかってしまった。
ベッドに寝ている梨田を見て、芽衣はため息をついた。
今度こそ、2度と会わない。
会いたくなんかならない。
ソファに置いていたバッグを手にして、芽衣は部屋を出ようとドアへ向かった。
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魔法の手鏡は岩の隙間に置いてきた、ひと気が無い岩陰には、きっともう誰も来ないだろう。
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ドアノブに手をかけ芽衣は 、ドアをグッと押した。
照明が落とされた廊下。
誰もいない、ひっそりとした空間が長く続いている。
ふと芽衣は、足を止めた。
振り返りたい衝動に駆られてしまう。
バカやってる…私。
苦笑して芽衣は、振り返らずに頭を振り、また廊下を歩き出していた。