【【贅沢な片思い】】ヤツの所には行かせない!
「驚いた?」
楽しげに微笑む梨田。

梨田の向かい側に座るなり、声を小さめにして芽衣は言った。
「もう、二度と会わない約束でしたよね?」

「うん、そうだね。12時まで一緒にいてくれたらね」

「いましたよ。あの土曜日の夜は12時過ぎまでちゃんと。あなたは寝ていてわからなかったのかもしれませんが」
芽衣は、テーブルに身を乗り出した。

「ふっ、誰が夜の12時って言ったんだ?」

「えっ?」

「俺の12時は、昼間。真昼間の12時だ」
梨田は、ふっと笑ってみせた。

「は?」


「つまり、日曜日の真昼間の12時まで一緒でいるのが、俺がした約束だ。従って、夜に帰った芽衣の方が約束違反だ」

「なに? そんなのっておかしいわよ。昼の12時なんて聞いてない」

「聞いてないし、勝手に思い込む方が芽衣が悪い」


「私が悪いですって?! あなたね……」
反論仕掛けたが芽衣は、周りの目を気にして言葉を飲み込んだ。

「……あなた、私の職場まで一体何しに来たの?」

「そりゃあ…」
テーブルの上に置いていた芽衣の手に自分の手を重ねる梨田。

「決まってるだろ?」
まっすぐに芽衣を見つめ、梨田はニッコリ微笑んだ。

「会いに来たんだ、芽衣」


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