【【贅沢な片思い】】ヤツの所には行かせない!
会いに来た…
モテ男が口にするそんなくさい言葉には、きっと、たいして意味なんかないのだろう。
そうわかっていても心が揺れた。
「芽衣、会いたかったよ」
ぐっと前に身を乗り出してきた梨田。
「は? そんなこと良く言えるわね」
「そんなこと?俺の本音だけど?」
芽衣の手を少し握ってきた梨田。
慌てて手を引き抜いた芽衣は、また周りを気にしてから
「私に会いに来たとかいう、つまらない冗談はいらないから、早く本当の目的を言ったら?」
と声を潜めて言って梨田を睨んだ。
梨田は、テーブルに置かれたコーヒーカップのハンドルをつまんで口元まで持ってきてから呟いた。
「…芽衣は、お前は案外つまんない女だな」
失礼な男だ。突然現れておいて、会いたかったとかぬかして、今度はツマラナイ女だと。
かなり、ムッとしていた。
「ちょっと、それどういう意味?」
「周りを気にしてばかりいるからさ。会社で男と会うときは、いつもそうやって周囲を気にしてんのか? それじゃあ、肝心の男の気持ちは読めないだろうな。たぶんさ、芽衣はロクな恋愛してきてないんだろう」
人を分析して、知ったかぶりして、上から物を言う。最悪な男だ。
「は? 職場なのよ。変な男が来たら周りを気にするに決まってるでしょ。それに、私が何を気にしようと、ど、どんな恋愛しようとあなたには関係ないわ」
「もしかして、職場の男と不倫とかしてたんじゃないか?だから、すぐ周りを気にする癖がついてるんだろ?」
「!」
芽衣は目を見開いて梨田を見た。
職場の男と不倫?!
冗談じゃない!