【【贅沢な片思い】】ヤツの所には行かせない!

「何かわからない? 2回目のデートの誘いだよ


「だから、行きませんよ」

「どうして。楽しいぞ」

「行きません」

「なんで? ふーん、どうしても行かないっていうんなら」
ガタンと大きな音を立てて椅子から立ち上がる梨田。

また、皆の視線を集めている。

「買う気がある客を毛嫌いするなんてさ〜全くここは、どうなってんだよ。もう、いい。頼まないよっ」

言い捨てるような言い方をした梨田は、怒ったように歩きだし出入り口のドアの方へ向かっていく。

何あれ。
下手な芝居して。

心配そうに様子を窺っていた山本チーフが、ボケっとして座っている芽衣のところへ早足でやってきた。
「田中さん、何してるの、早く追いかけて!お客様の怒りを鎮めてきなさい!」

椅子から芽衣を立たせるチーフ。

「あ、でもあの人は…」

「いい訳はいらないから。早く追いかけてっ」

仕方なく急いで梨田の後を追いかけ、芽衣は自動ドアから外へ出た。

「梨田さんっ」
呼びながら辺りに梨田の姿を探した。
< 67 / 112 >

この作品をシェア

pagetop