【【贅沢な片思い】】ヤツの所には行かせない!
「呼んだ?」
会社を出てすぐの電柱の隣に梨田は立っていた。
「梨田さん、あなた私を困らせて面白い?」
「いや、ん〜〜だけど、俺を追って来てくれる芽衣を見るのは好きかな」
「いちいち、からかうのはヤメて」
「からかわないよ。俺は水曜日に芽衣とデートがしたいだけ」
「私はしたくないわ」
「そっ、わかった。それなら、もう俺には用がないな、帰るよ」
「待って。物件探しは?」
梨田の右腕を芽衣は両手で掴んだ。
「俺を振った女には、頼めないよ。普通に会えないだろ?俺さ、今まで振られた経験がないんだ。だから、今は相当傷ついてる」
胸を両手で押さえてみせる梨田。
「でも芽衣がデートしてくれたら〜俺さ、このまま芽衣に物件探し手伝ってもらうよ」
デート。
これは、しなければならないだろうか。
いや、絶対に嫌だ。
嫌いな男と何故デートをしないといけないんだろ。
ここは、チーフに追いかけたけど無理でしたと謝れば…。
芽衣は唇を噛み締めた。
新しいチーフに頭を下げるなんて、絶対に出来ない。
本当は、チーフになるのは私だったはずだ。
でも、それも今回は諦めたし、自分の実力不足も認めたはずだった。
彼女より実力が下だなんて、やはり認めたくない。
何よりもチーフに頭を下げるなんてことは、出来るだけ避けたかった。