【【贅沢な片思い】】ヤツの所には行かせない!
「いいわ。穏便に物件探しを続けてくれるなら水曜日会いましょう」
「おっ、物分かりいいね。じゃ、水曜日はデートだな。昼頃からでいいだろ? 連絡するよ」
「わかったわ」
この男と会うなんて気乗りしない。
デートなんて風に言いたくない。
ああ、どうしてこんなことになるんだろ。
ムスッとする芽衣。
自分と目を合わさない芽衣の顔にサッと近づいてきた梨田。
次の瞬間、芽衣は頰にそっと触れるだけのキスを受けていた。
「! 何するのよ!」
ビックリしてキスされた頰を押さえる芽衣。
「可愛いからキスしたくなってさ。口にしたら殴られそうだから」
悪びれた様子を見せない梨田に芽衣は握りしめた拳を振りかざす。
「おっと! 危ないな、芽衣。暴力は止めよう。言えばわかるから」
芽衣の拳は、すぐに梨田に掴まれてしまう。
「あなたが言ってわかるような人とは思えないんだけど」
「そう? でもさ、俺とならオープンな恋愛出来るよ。これは本当」
オープンな恋愛。
その言葉に握りしめた芽衣の拳の力が抜けていく。
確かに、この男となら、オープンに街中や会社の近くでキスしても馬鹿なカップルだと思われるだけで済む。
だが……。
あの人とは、そうはいかなかった。
2年前まで付き合っていた男の顔が芽衣の脳裏にちらついていた。