【【贅沢な片思い】】ヤツの所には行かせない!
芽衣の瞳をたっぷりみつめてから、梨田は柔らかくほころばせた。
「芽衣、引き止めてごめんな。寒いから早く帰って風呂に入って良く温まって寝な」
芽衣を肩をポンポンと叩いてから梨田は羽織っていたシャツのボタンを閉めはじめた。
ボタンを閉めながら運転席へ戻っていく梨田。
ボタンを閉めるほど寒いの?
今、そんなに寒い?
たしかに少し温度は下がってきたようだけど、今は初夏だ。
涼しいくらいが丁度いいのに。
それにしても、馴れ馴れしい。
ハグなんてされたくないのに。
車のドアを開けて大きく芽衣に手を振ってから運転席へ乗り込んで行った梨田。
その屈託ない笑顔を乗せたクルマを芽衣はコンビニの店先で静かに見送った。