【【贅沢な片思い】】ヤツの所には行かせない!

そうだ。
お店に電話してみよう。
さりげなく客のフリをしてオーナーが出勤しているか聞けばいい。

住宅展示場から少し離れたところまで来てから、芽衣はバッグからスマホを取り出した。

ネットで恵比寿にあるレストランの電話番号を検索する。すぐに番号はわかった。

それに電話しようとして、ふと指先を止める。

もし、本人が出たら?

…その時は、何も言わずに切ろう。あの男が元気だということが確認さえ出来ればいいのだから。


「お待たせ致しました。リストランテ アムレートでございます」
若い男の声が聞こえてきた。

「恐れ入ります。あの、オーナーの梨田さんはいらっしゃいますか?」

「失礼ですが、どちら様でしょうか」

返答に困る芽衣。だが、自分の苗字が世の中に沢山ある苗字だと思いついて安堵する。

「…田中です」

「田中様。申し訳ございません。本日オーナーは休みを取っております。何か御伝言などございましたら承ります」

あの男は休んでいる。

やはり、心配していた通り梨田は休んでいたのだ。

「休み…あの急なお休みですか? 体調を崩したとか」

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