【【贅沢な片思い】】ヤツの所には行かせない!
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来たくて来たわけじゃない。
自分の行動に自分で苦し過ぎるいい訳していた。
仕事帰りにスーパーで喉に負担がないような食べ物や飲み物を買いこんでやってきた。
恵比寿駅から徒歩10分くらいの場所にある高級そうなマンション。そのマンションを見上げて
芽衣は溜め息をついた。
エントランスに入り、自動扉の前にある玄関集合機でレストラン従業員向井に教えられた部屋番号を押した。
少しして「はい」と低い掠れた声が聞こえてきた。
「あの、梨田さん。私…田中芽衣です。あの急にごめんなさい。向井さんに、レストランの向井さんに聞いて風邪ひいてるみたいだって、だから」
話している途中でドアが開いた。
「上がってきて」と抑揚のない声で言われ、なんだか場違いな気分になってきた。
不安な気持ちを抱えながらも、扉が閉まったらまずいので芽衣は急いでから中へ入った。
2台あるエレベーターのひとつで7階まで上がり、右や左の部屋番号を見て左方向の廊下を進んだ。
726号室。
あった。
ここだ。
今更、ドアの前で芽衣は躊躇していた。
ドアをみつめて固まる。
やっぱり、来たのは間違いなんじゃ?
足がエレベーターホールへ向きかけた。
いや、私のせいで風邪をひいたのだから、お見舞いするくらいは、人として当然の行いだ。
誰でもすること。
誰にでもすること。
芽衣は、まじないのように心の中で繰り返していた。