【【贅沢な片思い】】ヤツの所には行かせない!
「大丈夫。私、結構体は丈夫だし。仮にうつっても文句は言わないから。だって…自分からきたんだもの」

「今日の芽衣は優しいのな。俺…ゴフッゴホゴホなりそ」
咳をしながら、また両手を広げてみせる梨田。

「もう、いいから…気にしないで寝てて。おかゆ出来たら起こすから」

「うん、サンキュー」
いつもより元気のない梨田の「サンキュー」だった。



やはり、体力を消耗してるのかもしれない。

ない早く良くなるといいな。

素直にそう思っていた。
いつもみたいに軽い口調で『サンキュー』と言えるように早く回復すればいいのに。

頭の中で両手を広げた梨田の姿を思い出していた。

『ハグしたい。キスしたい』

今思い出しても恥ずかしい。
恥ずかしいことを言う男だ。

思っていることをすぐに言葉に出していうなんて。普通じゃない。
軽すぎて嫌。

頭の軽さは、きっと病気をしても変わらない。


あと、40分位だ。

ことこと煮たら、体に優しい柔らかなおかゆができるはず。

そうしたら、おかゆを持って行ける。
そしたら、またあの顔をみることになる。

そうしたら……。

壁にかかる四角い時計の針が進むのを少し微笑んで芽衣は見上げていた。



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