【【贅沢な片思い】】ヤツの所には行かせない!
「可愛い赤ずきんが家帰らないなら、おかゆと一緒に食べちゃおっかなぁ」
目が合い、お互いを見つめた。
目を合わせ、その下の鼻を見つめ、更に下の唇を見つめた。
梨田の形がいい唇が少し動いた。
「食べでもいい?」
再び窺うように梨田に目を見られて緊張する芽衣。
おばあさんに化けた狼に「食べでもいい?」なんて聞かれたとして「どうぞ」なんて赤ずきんは言わないはずだ。
「嫌い」
質問に対する返事には、なっていなかった。
「ふっ、わかってるよ。ゴホゴホッゴホゴホッ」
大事な場面で咳き込む梨田。
咳き込む梨田の背中をさすりながら、芽衣は思っていた。
嫌い。
モテ男なんか大嫌い。
食べられもしないくせに「食べでもいい?」なんて聞かないでよ。
鳥肌の出そうな台詞を咳と一緒に吐くモテ男なんかいらない。
私が欲しいのは、誠実な恋人だ。
こんな軽い男じゃない。
絶対に違う。タイプじゃない。