瀬名先輩は王子様
ありがとう、愛子
その日の放課後、私は教室のベランダからグラウンドを見ていた。
サッカー部の練習風景がよく見える。
私の視線の先には、瀬名先輩が。
瀬名先輩はフォワードで得点を取るポジションらしい、ということも愛子から教えてもらった。
ありがとう、愛子。
瀬名先輩のシュートは見事なほどに鮮やかで、サッカーを全く知らない私でも感動した。
それから毎日、放課後はサッカー部の練習を見ていた。教室のベランダはいつの間にか私だけの特等席になっていた。
瀬名先輩がプロのサッカー選手になりたいと思っていることも愛子が教えてくれた。
愛子には年子のお兄さんがいて、そのお兄さんと瀬名先輩が中学の同級生だったらしい。
中学の卒業文集を見せてくれたのだ。
瀬名先輩の将来の夢は『プロのサッカー選手』と、書いてあった。とても綺麗な繊細な文字で。文字でさえも惚れさせてしまうなんて、王子様は完璧だ。いや、完璧でなくたって、好き。大好き。
ありがとう、愛子。