パリを背にして
序章
 もう、20年になる。

 その時、私は全てを無くしわ。

 パリがドイツ軍から解放された時、パリの大多数の人は喜んだ

 悪逆非道なドイツ軍に占領され、多くの者達は息を殺し、生活していた。

 抵抗者はゲシュタポやSDに捕まり拷問された挙句に殺される。

 この占領期にどれだけの人達が命を落としたか分からない。

 そしてこの日をどれだけ待ち望んでいたかその気持ちは分かる。

 しかし、その気持ちは理解できるけど心から共感はしていなかった。

 私はフランス南部の或所に住んでいる。私の家の周りは広大な農園があり、ほとんど人はいない、その農園も私の物ではない。

 私は壊れそうな小屋みたいな家に住んでいる。そこで私は小さい畑を耕し、暮らしていた。時には、農家から差し入れがあるが、殆どが、自給自足だった。

 この生活には満足していた。しかし、このフランスはすでに祖国ではなかった。

 私の夫はドイツ人で親衛隊だった。そして私の弟も親衛隊にいた。

 私はパリが解放された日に売国奴になった。

 その時、私は全てを無くした。
 
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