俺と結婚してくれないか
*13
*****

中学生になり、敬太は少し声が低くなった。

小学生の頃と変わらず人気者で、いつもクラスの中心に居た。

女の子からの支持も厚かった。

小学生の頃と違い、おさげの少女は敬太に話しかけてくる事は少なくなっていたが、家が近い事もあり通学はいつも一緒だった。

それがある日を境に部活が忙しいから、委員会が忙しいから。と理由を付けられ徐々に離れていった。

敬太は他の人と帰ることが多くなり、お互いに顔を合わせる事も少なくなっていった。

「ピッチャー振りかぶって…」

「ちょっと!男子ー!今掃除中でしょー!」

「おまっ!ちょっ!おい!」

バンッ!バコッ!バラバラバラ…

「おい敬太!どこ打ってんだよ!」

「お前のコントロールだろーが!」

「ちょっと!!掃除にならないじゃん!」

「ごめんねえ、ちゃんと片付けるから先生に秘密にしてね?」

「もっもう/////」

ホウキを持った敬太に投げられた雑巾は予報外の方へ飛びゴミ箱を倒した。

敬太がゴミ箱の中身を拾って捨ててる時、ふと不自然にクシャクシャにされた紙を数枚見つけた。

どうやら手紙のようで差出人は不明だが、女の子の字だった。

不本意だが読んでしまった。

『あんたさあ、その体の傷って本当に敬太を庇った時についた傷なの?そう言って敬太に同情して貰おうとしてるだけなんでしょ?ってか、キモイよそれ。』

『敬太に近づき過ぎ。あんたが近くにいると事故の事思い出して辛いんだよ?なんで解らないの?』

『家が近いとか、それで有利だと思ってるの?そんなグロテスクな傷見たら化け物にしか見えないから。』

敬太はそれを読み、握りつぶした。

「なんて書いてたの?俺にも見せてー!」

「ちょっとやめなよ男子ー!」

そんな声が飛ぶのを無視し、廊下に出た。

「けいちゃん……!?」

するとそこに丁度よく彼女がいた為、敬太は少女の腕を掴み引っ張って歩き出した

「え!?まって!ちょっと!」

少女はふと敬太の拳をみてみると、なにやら見たことのある柄の紙を握りしめていた。

「あ!違うの!それ違う!!嘘だから!それ嘘なの!」

「うるせえ!!」

敬太が一喝すると彼女は黙った。

そのまま保健室に連れていった。

先生は出張中で居ない。

中に入り鍵をしめ、カーテンを全て閉めた。

「脱げ。」

おもむろに敬太は言った。

彼女は少し震えながら

「ちっ…違うの!」

敬太はぶっきらぼうに、彼女をベットに押し倒し、ボタンに手をかけた。

「けいちゃんっだめだよっ!」

小さく震える声だった。

ブラウスのボタンが全て外れた時、お腹から右腰背中にかけて尋常じゃない大きな傷が見えた。

「ごめんなさい……ごめんなさい……」

少女は小声で泣きながら手で傷を隠していた。

敬太は何も言えなかった。

ただぼーっとその傷を眺めいた。

さっきまで傷跡を隠してた手は、いつの間にか顔を隠していた。

鼻水を啜るような音もする。

敬太が何も言えず見ていると、

「こんなの見せてごめん、汚いよね。」

震えながら途切れ途切れの小さな声で話す。

「…なんで黙ってたんだよ。」

「だってけいちゃん……怒るでしょ?」

「はあ!?!?!?!?」

敬太は廊下に響くほどの大きな声を出した。

その瞬間少女はピクッとして縮こまった。
そして恐る恐る話し出した。

「けいちゃん…、自分のせいだって思っちゃうでしょ?」

「……。」

「これは大好きな人を守れた名誉の勲章なんだよ。全然辛くないんだよ。…だからけいちゃん、自分の事責めないでね。私が勝手にやった事だから。だから無理に私に構おうとしなくて良いんだよ。私が悪いんだよ。」

そう言って赤くした目で敬太を見つめ、いつも通りニヘッと笑った。

その少女を敬太はギュッと抱き寄せた。

「え!?けいちゃん!?」

少女はびっくりして抵抗した。

「うるせえ。」

少し低くなった声で言うと、少女は抵抗をやめた。

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