散歩道
大通りへ出ると、さっきより車の通りが多くなった。


道路を渡り、路地に入ると、新しい家が立ち並ぶ。
この辺りは、新幹線の建設にあたった家の分譲地だ。



おしゃれな家に囲まれた一角に小さな公園がある。
ベンチと花壇しかないこの公園は、二人で星を見た場所だった。




『ねぇ。疲れたよぉ。誠也さ〜ん』



ちょうど公園が見えた時だった。
私はもっと長く一緒にいたくて、駄々をこねた。



『はぁ?あとちょっとだろ。頑張って歩け!!』

『え〜。やだ〜』

『あと10分くらいだから。麻里ちゃん歩けるでしょ?』

『むーりー』


一時間も一緒にいたのに、あと10分で離れると思うと寂しくなった。

もっと一緒にいたくて。
もっと側に近付きたくて。

彼との「さよなら」が近付くと私は、いつもこうして駄々をこねる。


『麻里ちゃん。わがまま言わないの』


彼は慣れた感じで、小さい子を宥めるように言った。

私はそれさえも嬉しくて、寂しいのに自然と笑みがこぼれる。


『ねぇ!!』

『ん?帰る気になった?』

『星がきれいだよ。誠也さん♪』

『…人の話聞いてる?』



こんなやり取りも好きだった。
馬鹿な話をしては、コントのようなことをして、いつも二人で笑ってた。


『聞いてな〜い♪』

『あのねぇ』

『星がきれいだよ。誠也さん♪』


彼の言葉を遮って、私は笑いながら言った。

困ったような笑顔をして私を見ている彼。
そんな顔も大好きだった。
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