妹の恋人[完]
気がついたら顔の横にアスファルト。

知らない男の人がそばにきて声をかけてくれる。ああ、車とぶつかったんだ、俺。

「だいじょうぶ・・・・です・・・」

起き上がろうとしたところまでは記憶があったけど、体に力が入らなくて。

遠くから救急車のサイレンの音が聞こえた気がするけど。

そこから先のことは覚えていない。

気がついたら病院のベッドに寝ていて、そばに泣きじゃくるカナコがいた。

手を伸ばしてカナコの頭を撫でてあげたいんだけど、あちこち痛くて動けなかったんだ。

「カナ、コ」

やっと絞り出した声で名前を呼ぶと、びっくりしたのかカナコが飛び上がった。

「おにいちゃん!気がついた!?」

目を開けた俺に、涙でひどい顔をしているカナコが飛びついてくる。

「いたた・・・」

体中が痛くて、カナコの触れた腕もうまく動かせないことに改めて気がついた。
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