妹の恋人[完]
「手術が終わってもなかなか目を覚まさないし、本当にびっくりしたんだから!」

手の甲で涙をぬぐいながら、カナコが怒っている。

手術・・・俺はどれくらい寝ていたんだろう?

「昨日の夜は本当に生きた心地がしなかったわ」

カナコにタオルを渡し、顔を洗ってくるように言う母さん。

「母さん、今、何時?」

カナコが病室をでていったのを確認してから、母さんに問いかける。

「今?もうすぐ11時ね。あら、もう少ししたらお昼の時間じゃない?」

「お昼!?」

びっくりして大きな声を出したら、胸のあたりが苦しくてひどい痛みに襲われる。

「コウヘイ、大丈夫!?肋骨が折れなかったのが不思議なくらいひどくぶつけたみたいだから・・・」

胸のあたりに激しくぶつけたあざができていて、レントゲンの結果なんともなかったらしく。

でも、奇跡に近いでしょうと先生が話してくれたらしい。

「手と足のけがはしばらく入院が必要だけど、それ以外はすぐによくなるそうよ」

学校には連絡入れたから、夕方担任の先生が来てくださるって。そういう母さんは、そっと俺の顔をなでると、大丈夫、と自分に言い聞かせるようにつぶやいた。

夕方、部活の帰りに事故にあって、そのまま意識を手放したってことは、、、そうだ、高橋さん。
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