妹の恋人[完]
「母さん、電話って使ってもいいのかな」

「お友達?」

台の上に置かれていた俺の携帯電話は、病室ということもあって電源を切ってあるらしい。

「高橋さんに、連絡しなきゃ」

夕べ電話する約束したのに、連絡もできずにいる。

もう学校で俺の事故のことを知っただろうか。

きっと、すごく心配している。

「ああ、高橋さん。でも今は授業中だろうから・・・カナコに頼んで、後でメール送ってもらおうか?」

部屋で携帯がつかえたとしても、今の俺には自分でメールを作ることすらできなさそうで。

ゆっくりなら話もできそうなので、カナコに作ってもらい外で送信してもらうことにした。

顔を洗ってすっきりさせてきたカナコは、俺を見てまた泣きそうになりながらも、必死で笑顔を作っている。

なんだかそれが痛々しくて、俺も泣きそうになってしまった。

体の痛みよりも、カナコの心の痛みの方が、何倍も辛い。

「メールなら作れるよ。なんて作る?」

窓際でカナコがこっそりと電源を入れた携帯電話。
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