妹の恋人[完]
しばらくして。

主治医という男の先生が来て怪我の現状とこれからの治療について話を始めた。

右腕と手首は、手術の経過次第でリハビリを始めるということ。

左足の靭帯は、きれなかったものの激しく伸びた状態にあるようで、きれた場合よりも完治に時間がかかると言われてしまった。

「しっかり固定して、痛みが引いてきたら歩けるようになりますからね」

全身の痛みも2~3日でよくなるらしいし、腕が上がらないのも一時的なものだろうから様子を見ましょう、とのこと。

「若くて体力があるから、きっと退院も早いと思いますよ」

一緒にがんばりましょう、そういうと先生は部屋を出て行った。

お昼ご飯を母さんに食べさせてもらう。

お粥などの消化によさそうなもの。なんだか食べた気がしないけど、仕方がない。

俺の食事が終わると、母さんとカナコが食事に出かけたのでしばらく外を眺めていた。

車とぶつかった瞬間のことはあまりよく覚えていない。

ああ、買ってもらった自転車はやっぱダメになっちゃったのかな。

そうだ、いつになったらバスケやれるんだろう。

ワタルも俺の怪我のこと、もう知っているんだろうか。

先生の話だとそんなに怪我はひどくないみたいな言い方だったけど、足と腕は元に戻るのだろうか。

一人でぼーっと考えていたら、いろんなことが不安となってあふれ出してきた。

・・・カナコ、早く戻ってこないかな・・・。

首を動かして入口の方を見ると、泣きそうな顔をして立っている人が目に入った。
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