妹の恋人[完]
俺のつぶやきが聞こえたようで、マンガから視線を俺に移したカナコが首を傾けている。

「いや、学校の先生ってどんなだろうって」

「ん?おにいちゃん学校の先生になるの?」

とたんに目をきらきらさせて、カナコが俺に寄ってきた。

「え、いや、ちょっとどうかなって思ったんだけどね」

カナコの視線にどきどきしながら、なんとなく話を濁そうと思ったけど、好奇心には勝てなくて。

「いいじゃん!かっこいいよ!学校の先生!」

読んでいたマンガはそっちのけで、両手を組んで俺が学校の先生だったら~なんて想像している。

「うーん、おにいちゃんの授業、受けてみたいね!」

ねー、お母さんもそう思うでしょー?なんて、キッチンで夕飯を作っていた母さんにまで話を振っている。

「ふふっ。そうね、コウヘイは丁寧だから教えるの上手だしね」

カナコの言葉に賛同して、今度は二人で盛り上がってしまった。

それ以来、俺の中で先生という職業がなんだか大きく膨れ上がってきて。

そんな話を高橋さんにしたら、教育学部も悪くないわねなんて言われて、ちょっとその気になってしまって。

単純な俺は、ほかに何か見つかるまでは国立の教育学部を目指すことにした。

今の成績ではまず無理だと思うので、これから努力が必要だった。

まずは目の前にある3学期最後のテスト。

2月に入ってすぐにあるテストは、もう目前に迫っていて。

時間のある限り、学校帰りは図書館へ寄って勉強をすることにした。
< 155 / 587 >

この作品をシェア

pagetop