妹の恋人[完]
「ありがとう、うれしい。家へ帰ったらいただくよ」

後ろの方の席に二人並んで座ることができたので、そっと手を握った。

学校へ着いて、教室へ行くとどこかそわそわしているのは女子だけじゃなくて。

相沢も彼女からチョコを貰ったんだと俺に見せてくれた。

うれしそうにチョコを食べている相沢を見て、俺も今朝高橋さんからもらったチョコを開けようかと思っていたら、同じクラスの女子に声をかけられた。

「浅野君、ちょっといいかな?」

話をしたことはなかったけど、いつも何人かの女の子とグループで固まっているうちの一人だとわかる。

「・・・ここでいい?」

もうすぐチャイムも鳴るし、今から外へ出るのはいやだな・・・。

なんとなく、彼女が何をしたいのかがわかっていた俺は、あえて教室の中で終わらせたいと思っていた。

「ちょっとあっちへ来てほしいんだけど」

教室の後ろに、彼女がいつも一緒にいる何人かの女の子がこちらを見ながらこそこそしていた。

なんかいやだな・・・。

すがるように必死に訴えてくる彼女の名前すら思い出せないのに、それでも強く断ることもできなくて、化彼女の言うまま教室の後ろまで付いていく。

後ろで相沢が何か冷やかしみたいなことを言っていたけど、早く終わらせたい俺はあえて無視した。

「ごめんね、あのね、これ、受け取ってほしいの」

俺を呼びに来た彼女とは違う、輪の中にいたおとなしそうな女の子が、ピンクのリボンのついたチョコレートらしき箱と手紙を俺の前に差し出してきた。
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