妹の恋人[完]
「え、俺に?」

なんとなくそうかなとは思っていたけど、いざ目の前に差し出されると正直困ってしまう。

高橋さん以外から本命チョコ(だよな?)をもらう気はなかったけど、でもむげに断るのもどうかと思うし。

かといって、期待を持たせるようなこともできない。

「受け取ってもらえませんか?」

顔を赤くしながら俺に差し出された箱と手紙。

「あの、気持は嬉しいんだけど。俺彼女居るし、彼女以外からチョコとか受け取る気ないんだ」

ごめんね、とそれらを受け取ることなく自分の席へ戻ろうとしたら、俺を呼びにきた女子が俺の腕をぐいっとつかんできた。

予想外の出来事にびっくりして体がよろけそうになってしまう。

「浅野君、冷たいんじゃない?」

怒ったような声で言われたけど、俺は危うく転びそうになったところで。

「・・・申し訳ないとは思うけど、彼女のことが好きなんだ。だから、ほかの人からは受け取れない」

はっきりと言わないとだめなんだと思い、腕をつかんでいる彼女の目を見ながら言った。

さっきまで強気だったその彼女も、なんだかおどおどしだして俺の手をパッと離した。

「ごめんね、浅野君。でも、ありがとう」
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